ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「さよなら子供たち」 社会問題を考えたい時に〔19〕 

さよなら子供たち」 
ルイ・マル少年が垣間見た戦争。




【原題】AU REVOIR LES ENFANTS
【公開年】1987年  【制作国】仏蘭西 西独逸  【時間】103分  
【監督】ルイ・マル
【原作】
【制作】ルイ・マル
【音楽】フランツ・シューベルト サン=サーンス
【脚本】ルイ・マル
【言語】フランス語
【出演】ガスパール・マネス(ジュリアン・カンタン)  ラファエル・フェジト(ジャン・ボネ)  フランシーヌ・ラセット(ジュリアンの母)  スタニスタス・カレ・ド・マルベール(-)  フィリップ=モリエ・ジェヌー(ジャン神父)  フランソワ・ベルレアン(ペレ・ミカエル) イレーヌ・ジャコブ(-)

【成分】泣ける 悲しい 知的 切ない 寄宿学校 学園 第二次大戦 ナチスドイツ 1944年 1984年 フランス

【特徴】ルイ・マル監督の少年時代の体験を元にした映画。第二次大戦中、郊外の寄宿学校に疎開した少年と、学校に匿われているユダヤ人少年との友情と永遠の別れ。
 戦闘シーンは無いが、少年の眼前に「戦争」と「死」を突きつけられた衝撃を描いている。子役の演技が素晴らしい。

【効能】戦争と死の恐怖が心に響く。

【副作用】興味の無い人には退屈。ごく稀に美少年趣味の紳士淑女が良からぬ妄想を抱く。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。 初めて
「社会」というものを体感してしまった少年。


 この映画が日本で公開されたとき私はまだ学生だった。学内の掲示板に大きく「ルイ・マル監督最新作」としてポスターが掲示されていた。当時は特に関心も無く、ほろ苦い青春映画だろうと決め付けてパスしてしまったのだが、10年以上たってから重たい映画だと知った。(余談1)

 ルイ・マル監督の自伝的作品ともいわれている。当時、ヨーロッパで大絶賛の作品で、アカデミー賞にもノミネートされていた。
 舞台は第二次大戦末のフランス。フランス北部はドイツ軍の直接占領地となり、南部はフランス軍のペタン元帥を元首とする親独政権が管理していたが、連合軍の反撃攻勢が強まりフランスは再び戦火に包まれていく。主人公ジュリアンは戦争を逃れ地方のキリスト教系寄宿学校で暮らす裕福な少年である。そこへ知的で陰のある少年ジャンが転校してくるところから物語が動く。

 転校生は実はユダヤ人で、校長ジャン神父の計らいで生徒として匿われていた。そんな境遇なので当初はよそよそしい態度だったジャン少年だが、次第にジュリアンと打ち解け仲良くなって行く。またジュリアンの母親はユダヤ人や敵国ドイツ人にも差別意識のない好人物、善良な神父とジュリアン親子との関係にジャンは安らぎと幸せを取り戻したかのように見えたが、ゲシュタポがやってくる。
 不正がバレて解雇された学生寮の若い厨房係が密告したからだ。校長ジャン神父も連行される。学校を去る間際に振り返って「さよなら子供たち」と声をかける。これが映画のタイトルとなる。邦題も原題もほぼ同じ意味だ。

 戦火を逃れて田舎の寄宿学校へ疎開してきたので、空襲や戦闘場面などは無い。のどかな学園風景と、思春期へと入っていく少年たちの無邪気で揺れる心の学園生活がナチュラルに描写されていく。ジャン少年の微妙な表情の動き、ジュリアンの戸惑いの表情など、子役が巧い。
 中でも問題の厨房係、平凡な映画であればステレオタイプに性格の悪い小悪人として描かれるところだが、ここではごく普通の兄ちゃんとして描かれている。セレブな子弟が学ぶ学園の厨房で下働きをする労働者、神父やジュリアンの母親が気高く善良過ぎるので野卑に映ってしまうが、実際はありふれた若者だ。
 おそらく現在の私と同じ低所得者なのだろう。なんとかありついた厨房係の仕事。そこには、今はガキでも将来は自分を支配する立場になるだろう上流階級の少年たちがいる。彼らが無邪気に学園生活を楽しんでいるのを目の前に下働きを続ける。厨房の仕事だけでは稼ぎが少ないので、時には兄貴面して少年たちに煙草を売ったり、セレブの寄宿学校だけあって質の良い食材が集まるから横流しをする。主人公たち坊ちゃんにとっては「下界」「庶民」「社会の底辺」との接点のような存在だ。

 不正がバレて解雇される。見逃してくれと懇願しても高潔な神父は聞き入れてくれない。それならば今まで黙っていたけどゲシュタポに通報しよう。私はむしろ悪役である厨房係に感情移入してしまう。
 なに不自由なく育ち、家と学校の間でしか生きてこなかったジュリアン少年にとって、ジャン少年と厨房係は社会というものを垣間見た瞬間だった。そしてゲシュタポと学校の閉鎖、親友と恩師の逮捕、主人公にとって、そして監督自身にとって、遠くの出来事だったはずの「戦争」と「死」、その気配を感じた瞬間だった。

(余談1)掲示されていたポスターにある二人の人物、遠目ではフランスの美少女だと思ったので近寄って見たら「なんや男の子か」と少しガッカリして立ち去った。当時、クラスの女友達は美少年と美少年が愛し合う内容の漫画を同人誌に描いて楽しんでいた。その影響なのか、私はつい短絡的に「フランスの寄宿学校」→竹宮恵子作「風と木の詩」→「少年愛・同性愛」と連想してしまい、敬遠してしまったのだ。
 タイトルの「さよなら子供たち」から、イングランドのパブリックスクールを描いた教育モノ「チップス先生さようなら」のような内容かな、とも思った。



晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作


【受賞】ヴェネチア国際映画祭(金獅子賞)(1987年) LA批評家協会賞(外国映画賞)(1987年)




 
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☆☆☆☆(8点/10点満点中) 1987年フランス=西ドイツ映画 監督ルイ・マル ネタバレあり
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